研究概要 |
抗体遺伝子のクラススイツチ組換え体の解析は、ミエロ-マ、形貭転換細胞、ハイブリド-マなどで試みられてきたが、細胞増殖の間の二次的欠失の影響を免がれなかった。スイツチ組換えの結果、染色体外に産生される環状DNAは増殖せず、細胞増殖によって希釈されるだけであるので、もとの染色体切断箇所の配列を正くま保持している。成熟マウス脾細胞の培養系に、LPS抗原刺激下でTGFBを添加することによりIgAへのクラススイツチを誘導させた。IgA^+の頻度は0.1%から3.8%へと上昇した。環状DNAを分離し、その組換えDNA断片を解析し、LPSとTGFβ添加によってSμ/Sγ,Sγ/Sαなどの頻度が上昇するのを認めた。組換え体を詳細にみると、Sγ_2に対しては、SμよりもSγ_3組換え体の頻度が高く、Sαに対してはSμ、Sγ_3,Sγ_2の順に高くなっていた。このことは近い距離にあるS領域間で組み換えの起り易いことを示している。次に組み換え点での塩基配列を決定し、染色体上のスイツチ反復配列領域上に配置したところ、クラススイツチの供与体側はスイツチ領域の下流任領域に、受容体側は上流領域に位置した。このことはIgMからIgGIへのスイツチと異り、IgAへのクラススイツチは数種のIgGを経由して遂次的に行なわれることを示している。なおSα組換え体を染色体上に同定する試みの過程で、Sα上流域染色体塩基配列を決定し、従来の領域より更に700bpがSαと構造的に近似していることを明らかにした。その特徴はSαの80bp反復単位を構成する単純なCTGRGの反復配列に近いものであった。なおこの領域内で生じた二次的欠失の産物もやはり環状DNAとして検出された。
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