研究概要 |
成熟マウス脾細胞の培養中でのB細胞における免疫グロブリン(Ig)MからIgAへのクラススイッチに及ぼすサイトカインの影響をしらべた。LPS刺激によりB細胞は増殖するがTGF-βを共存させると増殖抑制がおこる。この際,3.5日間のTGF-βを作用させると4%程度がIgA産生B細胞へスイッチする。TGF-β1.5日間処理ではスイッチはみられないが、Sα領域の転写活性の上昇がみられる。更に2日間TGF-βの代りにIL-2を添加して培養すると、細胞増殖が回復すると同時に、TGF-β連続処理と同程度の頻度でIgA産生B細胞が出現した。すなわち,最初の1.5日間のTGF-β処理の間にIgMからIgAへのスイッチの方向ずけがなされ、あとの2日間で実際の組み換えが進行すると解される。 細胞増殖の停止状態と開始状態とでは,IgAスイッチ組み換えの行なわれる染色体高次構造が異ると考えられたので、両者におけるスイッチ組換え産物としての環状DNAを解析した。実際にはIgMからIgAへのスイッチ組換えの中間産物として高頻度にみられるSμ/Sγ_3組換え部域の比較を行った。 その結果,TGF-β単独でのスイッチ誘導の際にはSγ_3の一部が受容体となっていたのに対して,IL-2を併用した際には,Sγ_3の全領域が受容体として利用される傾向を示した。このことは,TGF-βによって開始されたスイッチ反応がIL-2によるDNA合成誘導と染色体構造の変化に関連して修飾されたことを示唆するものである。
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