非受容体型チロシンキナ-ゼp56^<lck>はCD4、CD8分子に細胞内において結合していること、抗CD4抗体による表面CD4抗原の架橋化により自己リン酸化されること等によりp56^<lck>はCD4を介した細胞内情報伝達に関与していることが示されてきた。またCD4抗原はエイズウイルスの感染レセプタ-であることが知られておりCD4に細胞内で連結しているp56^<lck>がエイズウイルスのT細胞への感染過程においていかなる役割を有するかについても興味がもたれている。これらのCD4の免疫学的、ウイルス学的機能に対してp56^<lck>がどのような役割を有するかについて分析を試みるために申請者はメタロチオネンプロモ-タ-とG418耐性遺伝子を有する発現ベクタ-psmTにヒトlckcDNAをつないだlck発現コンストラクトpsMTlckを作製した。さらにpSMTlckを遺伝子導入した細胞株を樹立した。これらの細胞株を用いてPMAあるいは抗CD4抗体による表面CD4抗原のinternalization(endocytosis)を検索したところ、p56^<lck>発現細胞では非p56^<lck>発現細胞に比べCD4抗原のinternalizationが著明に抑制された。さらに、p56^<lck>のチロシンキナ-ゼ活性を増強させるとp56^<lck>によるCD4internalization抑制はさらに顕著となった。このことはp56^<lck>はそのチロシンキナ-ゼ作用によりCD4抗原のinternalizationを調節している可能性を意味し、lckを含めた非受容体形チロシンキナ-ゼ分子群の生物学的役割の研究に新しい局面を開くものである。またlckを組み込んだトランスジェニックマウスについては現在その免疫学的変化を詳細に検討している段階である。
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