マウスTL抗原の発現機構並びにγδT細胞の分化機構の解析

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03454198
• 研究機関: 愛知県がんセンター
• 研究代表者: 小幡 裕一 愛知県がんセンター研究所, 免疫学部, 室長 (30177290)
• 研究分担者: 田口 修 愛知県がんセンター研究所, 病理学第二部, 主任研究員 (00142167) ; 高橋 利忠 愛知県がんセンター研究所, 副所長 (00124529)
• キーワード: マウスTL抗原 / 胸腺 / γδT細胞 / 転写調節因子

研究概要

マウスTL(胸腺・白血病)抗原は、MHCクラスI抗原に属するが、Hー2とは大きく性格が異なり胸腺細胞の分化抗原並びにTリンパ腫の腫瘍特異抗原の性格を兼備する。さらに最近のTL遺伝子導入マウスの解析から、TL抗原がT細胞の胸腺内分化に関与することが示唆されている。本研究の目的は、TL遺伝子の発現機構並びに機能を明らかにするとともに、胸腺T細胞の分化並びに機能獲得の機構を解明することにある。
1。TL遺伝子のプロモ-タ-、エンハンサ-並びにTL遺伝子転写調節因子の解析:TL遺伝子の転写開始点の5'側の約130塩基の領域に組織特異性を持つプロモ-タ-が存在することが、レポ-タ-遺伝子を用いた各種培養細胞への導入実験により明らかにされた。この領域は、TL陽性細胞では非常に強いプロモ-タ-活性を示すが、TL陰性細胞では極めて弱い活性しか示さず、また活性はレポ-タ-遺伝子との方向性に依存していた。さらに、このプロモ-タ-に結合する蛋白因子(群)が正常胸腺細胞の核抽出物中に存在することが、この領域を含むDNA断片を用いたGel Shift法により確認された。
2。γδT細胞の分化機構:TL遺伝子導入マウスの1系統,Tg.Tla^aー3ー1は、T細胞分化がαβ経路に進めずγδ経路に偏向する胸腺T細胞分化異常を示し、さらにγδTリンパ腫を高頻度に発症する。この系に豊富に存在するγδT細胞及びγδTリンパ腫の細胞表面抗原並びにT細胞レセプタ-遺伝子の再構成及び発現を検索し、γδ細胞の胸腺内での分化過程を検討した。その結果、γδT細胞は最も未熟であるStage1;ILー2Rα ^+HSA^+Pgpー1^+TCR^ーCD3^ーから、Stage2;ILー2Rα ^ーHSA^+Pgpー1^+TCR^ーCD3^ーへ進み、さらにStage3;ILー2Rα ^ーHSA^ーPgpー1^+TCRγδ^+CD3^+を経て、成熟したStage4;ILー2Rα ^ーHSA^ーPgpー1ーTCRγδ^+CD3^+へと分化することが示された。

研究成果

• [文献書誌] Sekido,Y.: "Preferential expression of c-kit protooncogene transcripts in small cell lung cancer." Cancer Res.51. 2416-2419 (1991)
• [文献書誌] Yoshikawa,K.: "Molecular cloning of the gene coding for the human T cell differentiation antigen CD7." Immunogenetics. 33. 352-360 (1991)
• [文献書誌] Mieno,M.: "CD4^-CD8^- T cell receptor αβ T cells:generation of an in vitro major histocompatibility complex class I specific cytotoxic T lymphocyte response and allogeneic tumor rejection" J.Exp.Med.174. 193-201 (1991)
• [文献書誌] Obata,Y.: "Abnormal thymic development,impaired immune function and γδ T cell lymphomas in a TL transgenic mouse strain." J.Exp.Med.174. 351-362 (1991)
• [文献書誌] Sekido,Y.: "Complex intrachromosomal rearrangement in the process of amplification of the L-myc gene in small cell lung cancer." Mol.Cell.Biol.
• [文献書誌] 小幡 裕一: "TLトランスジェニックマウスにおけるT細胞分化異常" 免疫薬理. 10. 50-58 (1992)