研究概要 |
申請者らは,銅によるメタロチオネイン生合成機構の研究中,ラット肝臓においてメタロチオネインとは異なる,新しい低分子量蛋白質が,銅によって誘導されることを見出した。この蛋白質は,従来のメタロチオネインが少量の銅の投与によって誘導されるのに対し,特に多量の銅が組織に蓄積してきた際に誘導されるという特徴を有し,その化学構造は従来のメタロチオネインとは全く異っている。 本研究の目的は,まず本蛋白質の精製法・分別定量を確立し,化学構造(アミノ酸配列)を決定し,ついで本蛋白質の誘導機構を,銅負荷実験の解析から究明することである。また,また北海道大学で発見されたウィルソン病モデル・ラットと教室に保存しているメンキース病モデル・マウスにおける本蛋白質の定量・分布を調べることにより,遺伝性銅代謝異常症の発症機構の解明の手掛りを得ることである。 当該年度において得られた結果は次の如くであった。 1.新銅誘導低分子量蛋白質の重金属組成 本蛋白質の誘導される条件下で,銅のみを含有する蛋白質が誘導されるとの新所見を得ことができた。一般に,銅誘導低分子量蛋白質は,結合重金属として亜鉛と銅を5:1の割合で結合しているものが多いが銅のみと結合し,亜鉛を全く含まない蛋白質の存在が考えられる。この蛋白質と本研究で追求している新銅誘導低分子量蛋白質とが,同一であるかどうか現在同定を急いでいる。 2.新銅誘導低分子量蛋白質のアミノ酸配列 現在,アミノ酸配列の決定に着手した。 3.遺伝性銅代謝異常症特にウィルソン病モデル・ラット中の蛋白質 LECラットの肝臓中に存在が示唆されている本蛋白質の精製をいそいでいる。
|