アミノー∂ーカルボリン(TrpーPー1・TrpーPー2)は、食品・大気・雨水など環境中に広く分布する発癌性複素環状アミンである。また、タバコ煙・ディ-ゼルエンジン排ガス中にも検出され、燃焼過程での生成も示唆されている。他方、アミノー∂ーカルボリン類は、多種の細胞に細胞毒性を引き起こすことが明らかにされつつあり、ヒト健康への影響に対する評価を行うことも重要である。故に、本研究では、アミノー∂ーカルボリン類の血管平滑筋細胞に対する毒性及びヒト発癌の機序に関する検討を行った。 1.アミノー∂ーカルボリンの血管平滑筋細胞収縮作用について : TrpーPー1・TrpーPー2は、濃度依存性の血管平滑筋細胞収縮作用を示した。この作用には、顕著なplt依存性が認められカルモジュリン拮抗剤Wー7、ミオシン軽鎖キナ-ゼ阻害剤MLー9によって抑制されたが、カルモジュリン拮抗剤として活性の低いWー5によっては影響されなかった。また、TrpーPー1による血管平滑筋細胞の収縮に伴い、細胞内遊離Ca^<++>濃度の上昇が観察された。収縮に対する外液Ca^<++>の影響を検討するために、2mMEGTAを添加した建衝液を用いたが、血管平滑筋細胞の収縮作用は影響されなかった。以上の結果より、アミノー∂ーカルボリンは、血管平滑筋細胞のCa貯蔵部位からCaを動員し、細胞内遊離Ca^<++>濃度を上昇させ、クルモジュリン・ミオシン軽鎖キナ-ゼ活性化を介して血管平滑筋細胞を収縮させることが示唆される。 2.発癌の機序に関する研究 : アミノー∂ーカルボリン類は、DNAに結合し、細胞に突然変異を引き起こすことにより癌化を誘導することが推定されている。故に、ヒト細胞より抽出したDNA中にアミノー∂ーカルボリン類が結合しているかどうか検討するために、アミノー∂ーカルボリン類に特異的なモノクロナ-ル抗体を作製中である。
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