研究概要 |
アミノ-γ-カルボリン類(Trp-P-1・Trp-P-2)は、食品・大気・雨水など環境中に広く分布する発癌性複素環状アミン類である。また、タバコ煙・ディーゼルエンジン排ガス中にも検出され、燃焼過程での生成も示唆されている。他方、アミノ-γ-カルボリン類は、多種の細胞に細胞毒性を引き起こすことが明らかにされつつあり、ヒト健康への影響に対する評価を行うことも重要でもある。故に、本研究では、アミノ-γ-カルボリン類のヒトリンパ球への細胞毒性とヒト発癌の機序に関する研究を行った。 1、アミノ-γ-カルボリン類のヒトリンパ球への細胞毒性:Trp-P-1及びTrp-P-2は、1-10μMの濃度でPHAによるヒトリンパ球芽球化反応を著明に抑制した。そのIC_<50>(50%の芽球化抑制を引き起こす濃度)は、それぞれ3.1μM及び5.1μMであった。他の複素環状アミン類(IQ、Glu-P-1,Glu-P-2)は、PHAによるヒトリンパ球芽球化反応に影響を及ぼさなかった。ヒトリンパ球芽球化反応の機序は、未だ十分に解明されていないため、Trp-P-1及びTrp-P-2のその抑制効果に対する機序を明らかに出来なかったが、環境中の発癌物質が免疫に関与するリンパ球に毒性効果を引き起こすことは、非常に興味深い。 2、発癌の機序に関する研究:アミノ-γ-カルボリン類は、DNAに結合する結果、細胞に突然変異を引き起こし癌化を誘導することが推定されている。故に、ヒト細胞により抽出したDNA中にアミノ-γ-カルボリン類が結合しているかどうか検討するために、アミノ-γ-カルボリン類に対する特異的なモノクロナール抗体の作製を試みたが、免疫原性が非常に低いため抗体作製までは至らなかった。
|