研究概要 |
ワクシニアウイルスーヘパト-マ法で発現させた12種のヒトP450とそれぞれ2種類のラットマウスのP450による有機溶剤の代謝を検討した。1.IIB7とIIE1におけるトルエンの代謝(ベンジルアルコ-ル、BA、の生成)の経時変化をみると、IIE1によりBAは4時間まで直線的に増加し、その後24時間まで非直線的に増加した。一方、IIB7によりBAは2時間まで直線的に増加し、その後8時間まで非直線的な増加をしたが、24時間後は逆に減少していた。すなわち、有機溶剤のように揮発性を有する化学物質の代謝速度は培養開始から1ー2時間の時点で測定することが望ましいといえる。2.12種類のヒトP450のうち、6種類のP450(IA2,IIB7,IIC8,IIE1,IIF1,IVB1)によってトルエンが代謝された。その代謝経路はいずれもトルエンからBAであり、o^-,p^-クレゾ-ルへの代謝経路は検出されなかった。トルエン代謝に関与しているアイソザイムのうち、最も代謝活性の大きいのはIIB7であり、次いでIIE1とIIF1であった。3.マウスとヒトのIA2のトルエン代謝速度はよく類似していた。ヒトIIB7とラットIIB1のトルエン代謝速度を比較すると、BA生成に関してはよく類似していた。しかしIIB1はo^-,p^-クレゾ-ルを生成するが、IIB7はこれらの代謝経路には関与していなかった。IIB1とIIB7は約87%の構造的類似性をもっているが、このたった13%の構造上の相違がo^-とp^-クレゾ-ルの生成を決定づけているものと解され、興味深い。また、トルエンはIIB1とIIF1によって代謝される。これらのアイソザイムは肝のみならず肺組織にも分布することが知られており、トルエンは凝いもなく肺でも代謝されることが明かとなった。4.トルエン以外にベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、フェノ-ル、N<Nージメチルホルムアミドおよびトリクロロエチレンについても同様の検討を行った。エチルベンゼンとスチレンに関してはトルエンの結果と類似していた。
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