研究概要 |
ワクシニアウイルス-ヘパトーマ法で発現させた12種のヒトP450アイソザイムによるスチレンとベンゼンの代謝速度を測定し、2種のマウスとラットのP450アイソザイムとの比較およびこれらの有機溶剤の毒性発現に関与するP450アイソザイムの同定を行った。 1.ヒトP450アイソザイムの中でスチレンの代謝活性が最も高いのはCYP2B6とCYP2F1であり、CYP2E1とCYP1A2がこれに次いでいた。CYP2C8のスチレン代謝活性は2B6の約半分であった。CYP3A3,CYP3A4,CYP3A5とCYP4B1もスチレンの代謝を触媒したが、その活性は低かった。スチレンは代謝的に活性化される。従ってスチレンの毒性にこれらののP450が関与していると推察される。CYP2A6,CYP2C9およびCYP2D6のスチレン代謝活性は極めて低かった。 2.マウスCYP1A1とCYP1A2もスチレンの代謝を触媒し、その程度はCYP1A1の方がはるかに強かった。ヒトCYP1A2とマウスCYP1A2のスチレン代謝活性をを比較すると、ヒトCYP1A2の方がはるかに高く、若干のP450一次構造の変化がスチレンの代謝に大きな影響を与えることが判明した。 3.ラットCYP2B1とCYP2B2もスチレンの代謝に関与しており、その程度は前者の方がはるかに高かった。ヒトCYP2B6とラットCYP2B1のスチレン代謝活性を比べるとラットの方が約2倍高かった。 4.ベンゼンとフェノールの代謝に関与しているP450の中で、CYP2E1の代謝活性は最も高く、CYP1A2がこれに次いでいた。CYP2B6あるいはCYP2C8もこれらの代謝に関与していたが、その程度は低かった。 5.マウスCYP1A1とCYP1A2もベンゼンとフェノールの代謝に関与していた。ベンゼンの代謝に関しては両アイソザイムの間に活性の差が認められないが、フェノールの代謝活性はCYP1A2の方が5倍も高かった。 6.ラットCYP2B1とCYP2B2はベンゼンとフェノールの代謝に関与していた。ベンゼンの代謝活性はCYP2B1の方が高かったが、フェノールの代謝活性はCYP2B2の方が高かった。
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