研究概要 |
1.平成4年度はethanolと各化学物質(nitrite,styrene)の肝細胞内酸化還元状態における相互作用について、より詳細な検討を行ない以下の結果を得た。 1)200μM NaN0^2と1.6,4.0,10.0,25.0mM ethanolの同時負荷により、酸素消費率、カタラーゼスペクトル変化率はNaNO^2単独負荷と比較して有意な増加が認められ、エタノール濃度10mMにおいて最大の変化が認められた。また、NOO_2-酸化率、NO_3生成率はエタノールにより有意に抑制され、その作用は通常の飲酒により実現される可能性のある血中エタノール濃度10mMにおいてほぼ最大となることが明かとなった。 2)エタノールは摂食条件下ではスチレン代謝に抑制的に作用し、絶食条件下では促進的に作用することが示された。これには還元型ピリジンヌクレオチド量の増減が密接な関連性を有しており、MADH/NAD比が上昇すると抑制的に、NADH/NAD比が低下すると促進的になることが明らかにされた。 2.市販されている食品中の亜硝酸塩およびソルビン酸含有量を測定した結果、国産ワイン、輸入果実酒中のソルビン酸含有量は0〜0.8ppm(n=9)、ソーセージ、ハム中の亜硝塩含有量は0〜47.1mg/Kg(n=22)であった。 3.日常的に多く摂取される化学物質であるエタノールについては、日常摂取量で肝細胞内は還元状態に傾き、エタノールは酸化されずに畜積される状態、相対的低酸素状態になることが示唆された。さらに、1)この状態はフルフェナム酸によって増強される、2)スチレン代謝は栄養状態により、抑制・促進される、3)NaNO^2の代謝を抑制する、 4)これらの結果はすべて日常我々が環境中より摂取あるいは曝露される可能性のある範囲内の濃度で起こりうることが示唆された。
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