研究概要 |
1,ラット潅流肝臓実験系を確立した。外在性基質を供給せず、31℃95%/5%CO2で飽和させた潅流液により潅流を行うことにより、潅流肝臓は生理的、かつ、外在性の環境化学物質による肝細胞内低酸素状態を観察するうえで適切な状態を長時間保持した。従って、本実験系は機能する臓器における化学物質によってもたらされる細胞内の相対的な低酸素状態を評価するうえで優れた系であり、化学物質の複合影響を観察するのに適していると結論した。2,フルフェナム酸を治療に使用している投与量を経口で投与した場合、血中エタノール濃度は有意に増加した。また、組織におけるアルコールの影響がフルフェナム酸の共存によって増強する可能性が示唆された。フルフェナム酸はミトコンドリアの酸化的リン酸化反応において脱共役作用を示すにもかかわらず、エタノール代謝経路中のアセトアルデヒド脱水素酵素活性を抑制することが明らかになった。3,エタノールのNO2-酸化抑制作用はエタノールがカタラーゼcompound Iに対する電子供与体として作用することによるものであり、通常の飲酒により実現される可能性のある血中エタノール濃度OmMにおいてほぼ最大となることが認められた。4,エタノールは肝細胞中の還元型ピリジンヌクレオチド量を変化させることによりスチレン代謝に影響を及ぼしており、しかもエタノールのスチレン代謝への影響は摂食条件下では抑制的に、絶食条件下では促進的に作用することが判明した。5,エタノールの急性投与によるラット行動量リズム影響には時刻依存性が認められ、そのメカニズムとして肝細胞の生理的なサーカデイアンリズム変動である肝細胞内相対的低酸素状態が関与している可能性が示唆された。6,これらの結果はすべて日常我々が環境より摂取あるいは曝露される可能性のある範囲内の濃度で起こりうることが示唆された。
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