研究概要 |
1.カドミウムの長期経口暴露による健康影響を明らかにするために,富山県神通川流域カドミウム汚染地域住民を対象に,尿細管機能障害に関する疫学的調査を実施した.カドミウム汚染地域内の11集落に居住する46〜60歳の女性住民119名を対象に早朝尿を採取した.また比較のために,神通川水系以外の1集落の同年齢の女性36人を対照とした.回収数(回収率)はカドミウム汚染地域=112人(89.6%),対照地域=29人(80.5%)であった.尿pHに比較的安定であるα_1ーマイクログロブリン(Uーα_1m)をEnzymeimmunoassay法で測定した.その結果カドミウム汚染地域住民のUーα_1は対照より有意に高く,尿細管機能障害が認められた.著しく高いUーα_1mを呈した5例のうち4例は,汚染米のみならず,川水の飲用歴を有していた.また4例は出生以来カドミウム汚染地に居住していた.46〜60歳の年齢層のおける尿細管機能障害の疫学調査が初めて実施されたが,この年代においても腎臓への影響が明らかとなった.次年度は尿・自家米中カドミウムを定量し,カドミウム負荷量と腎障害との関連について解析する. 2.カドミウム汚染地域では腎障害のみならず,骨軟化症の発生が知られている.そこでカドミウム汚染地の尿細管障害例の骨代謝を検討した.富山県神通川流域カドミウム汚染地域の23例の女性を対象に詳細な尿細管機能検査と骨代謝機能検査を実施した.多発性骨髄腫の現病歴をもつ1例を除いて解析した結果,全例に骨量の減少がみられた.そしてこの骨量の減少は,血清カルシウム,リン酸値に有意な差が現れる以前に,尿細管障害高度例において有意に認められた.この結果より,カドミウム暴露者の骨量の減少はきわめて早い段階で起こることが明らかとなった.
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