研究概要 |
(1)野外調査:これまでに、8月、11月、2月と3回にわたって瀬戸内海沿岸でムラサキイガイの採取を行ってきた。同時に生物採取水域における変異原性物質の回収も、ブル-レ-ヨン懸垂法で行った。試料からの変異原性検出結果は、サルモネラTA98(+S9)ではムラサキイガイ16検体中1検体(むきみ重量5g当り)、環境水域20地点中4地点(0.11gのブル-レヨン吸着相当量)に陽性、より高感度とされるYG1024(+S9)ではそれぞれが2検体と5地点で陽性となった。変異原性を示す分画の特定は、これまでの試料からは顕著な陽性を示す例が見つかっていないので、引続き検討している。また、変異原性の季節変動についても調査を続行している。なお、水環境での変異原性に影響を及ぼす要因として、生物試料であれは個体の大きさ,ブル-レ-ヨン懸垂法であれば水表面からの深さを比較検討したが、はっきりとした傾向は認められなかった。 (2)室内実験:既知の変異原性物質であるBenzo(a)pyrene(以下BaPと略)の、ブル-レ-ヨンによる回収と貝類への移行と蓄積実験のために、低濃度BaPを持続供給できる暴露装置を組立て,環境水中濃度に近似する0.03〜2.0ppbに設定できた。この装置で、ブル-レ-ヨンによるBaPの吸着回収実験を行った結果、吸着量は、BaPの水中濃度と同時に,水流の大きさによって大きく影響されることが分った。 (3)暴露実験に先立って、都市河川河口水域で7月に採取したシジミと、前述のムラサキイガイに含まれるBaP濃度を調べた結果,ともに10ppb以下であった。また、この貝類が棲息していた水域で吸着回収された環境水の高速液クロパタ-ンと、貝におけるパタ-ンを比較すると、貝類に蓄積して存在がクロ-ズアップされるピ-ク(分画)がいくつか認められた。これらの物質の同定と変異原性との関連は今後の課題である。
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