研究概要 |
スチレン曝露労働者の自覚症状と関連要因および神経行動機能を開発したテスト・バッテリ-を用いて検討している。ユニットバス製造(FRP工程)の2工場において、スチレン曝露者44名(男性39名、女性5名、平均年齢33.7歳)と非曝露者44名とを、性・年齢でペア・マッチングした。作業環境気中濃度は、A測定で平均15.8ppm(0.5〜104.1ppm)、B測定で0.9〜29.6ppmと全般的に低濃度であり、尿中代謝物(マンデル酸)量は平均0.06g/l(0.0〜0.49g/l)であった。サインテストの結果、有意差の認められた項目は急性症状としては、悪心・嘔吐などの不定愁訴、嗅覚の異常、皮膚症状、慢性症状としては、皮膚症状において、有意差を認めるが、神経症状などに関しては、曝露者・非曝露者に大きな差は認められなかった。また、多重回帰分折の結果は、作業中の症状、皮膚症状において、スチレン曝露の影響が若干認められた。テスト・バッテリ-の項目は(1)言語性(同義語)(2)積み木(視覚・空間認識、図形構成)(3)記号問題(視覚ー運動速度及び手指の巧緻性)(4)数唱(順唱・逆唱)(5)サンタアナ(視覚ー運動速度及び手指の巧緻性)(6)HE共応(視覚(目)ー運動(手)共応)(7)反応時間(認知(視覚ー運動)速度)(8)ベントン(視覚性(図形)記憶)(9)POMS(感情プロフィ-ル検査)である。これらテスト・バッテリ-の成績は現在38人について終了したが(1)言語14.94±4.11(曝露群),14.41±4.30(対照群)(2)積み木23.53±3.41(曝露群),21.06±4.40(対照群)(3)符号64.06±9.47(曝露群),66.88±11.62(対照群)(4)数唱11.59±1.78(曝露群),11.06±1.51(対照群)(5)サンタアナ右43.06±5.95(曝露群),43.29±5.36(対照群)サンタアナ左42.06±3.67(曝露群),41.82±4.76(対照群)(6)ベントン10.18±1.10(曝露群),10.82±0.92(対照群)であった。
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