研究概要 |
積極的な健康作りおよび高齢期の成人病予防における運動の意義を評価することを目的として、継続的な運動の実践が人体の生理機能、特に体力にどの様な影響を与えるかを疫学的に観察した。 第1の研究では、全国8ヶ所の健康増進センターの利用者3,132名を対象にライフスタイル(特に運動習慣)に関する質問調査、体力測定、臨床検査を実施した結果、体力水準の高いものは、若年時も現在も運動する習慣のあることが明らかになった。また、これらのものは、来所時に測定した血糖値が低く、肺機能が高いことがわかり、運動の成人病予防への効果が期待された。 第2の研究では、全国7ヶ所の健康増進センターを受診した7,286名を対象に質問票による追跡を実施した。追跡期間は1人平均7.1年間、観察人年は44,318人年で死亡者数は164名である。調査開始時の体力検査および臨床検査と追跡終了時の全死因および死因別死亡との関連を観察した。その結果、体力水準の高いものは全死因および心血管系疾患死亡が少なかった。また皮下脂肪厚が厚く、血糖値が高いものは全死因死亡が多かった。皮下脂肪厚が厚く、境界域・高血圧のものは心血管系疾患死亡が多かった。体力水準が健康増進に重要な役割を果たしていることが明らかになった。 第3の研究は食生活に関する項目と体力水準との関係を観察し、ついで食生活に関する項目のうち牛乳・乳製品の摂取状況、魚・肉の摂取状況、食塩摂取状況と主要観察項目との関係をみた。その結果、食品摂取状況と体力とは密接な関係があり、食品摂取状況は運動習慣および成人病リスクファクターとも深くかかわっていることがわかった。
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