本研究は、体液中ABO式血液型物質の臓器特異的エピト-プを認識する単クロ-ン抗体を作製し、それらを用いる免疫組織化学的手法により、組織細胞内での臓器特異ABO式血液型物質およびその前駆物質の分布を検討(平成3年度)し、次いでそれら抗体をリガンドとするaffinity chromatographyにて組織より臓器特異ABO式血液型物質の種々の前駆物質を単離、その化学組成を分析、さらに型転換酵素標品と反応させることにより、臓器特異血液型物質の生合成過程を究明(平成4年度)することを目的とする。 平成3年度における研究実績の概要は次の通りである。 1.当教室で既に作製されていた唾液中ABO式血液型物質の臓器特異的エピト-プを認識する単クロ-ン抗体と蛍光あるいは金コロイドで標識された二次抗体を用いて免疫組織化学的に染色されたヒト顎下腺標本を光学顕微鏡および電子顕微鏡下で観察した結果、本単クロ-ン抗体は粘液腺細胞とのみ反応した。なお、本実験に用いた顎下腺は剖検時採取したものであり、ABO式血液型物質やその前駆体の細胞内分布を明確にすることは出来なかった。また、他の霊長類や動物の粘液腺細胞とは勿論のこと、他のヒト組織とも反応しないことを認めた。 2.胃粘膜中ABO式血液型物質に対する単クロ-ン抗体を作製、本抗体を用いる免疫組織化学的検討を行ったところ、本抗体は胃粘膜腺細胞に特異的であることを確認、さらに大腸癌組織とも反応することをも認めた。また、本抗体の免疫組織化学的方法による組織特異性と分泌物を対象とした組織特異性に相違がある興味深い知見も得ている。 3.その他、膵液中の糖タンパクに対する単クロ-ン抗体も作製、免疫組織化学的手法により検索中である。
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