骨粗鬆症の発現に関わる骨細胞間ネットワークの細胞生物学的研究及びその治療への応用

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03454217
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 松本 俊夫 東京大学, 医学部(分), 講師 (20157374)
• 研究分担者: 池田 恭治 東京大学, 保健センター, 助手 (00222878) ; 山下 直秀 東京大学, 医学部(分), 講師 (90174680)
• キーワード: 骨粗鬆症 / エストロゲン / 骨芽細胞 / 破骨細胞 / 骨基質蛋白 / プロテオグリカン / 成長因子 / bone morphogenetic protein

研究概要

骨粗鬆症の発現機序を明らかにし、その予防・治療法を確立する目的で、以下の検討を加えた。
1.骨芽細胞から産生される骨吸収促進因子の検討:骨芽細胞由来の骨吸収促進因子の精製を更に進めた。前年度までの検討から、骨吸収促進活性はheparin親和性を示し基質・細胞表面に付着して存在することが明かとなった。そこで骨芽細胞を骨吸収促進ホルモン存在下で培養後に高濃度のNaClを添加した上で培地を採取し、骨吸収促進活性をheparin親和性カラムにより精製した。この活性分画はゲル濾過カラムからは2つのピークとして溶出され、これを更に多量に採取し逆相HPLCによる精製を進めており、充分量が採取されればそのアミノ酸配列の同定をはかる。
2.Estrogenによる骨吸収抑制機構の解明:Estrogenにより骨芽細胞からの骨吸収抑制因子の分泌が高まり、この因子もheparin親和性を示すことが明かとなった。この作用はestrogenに特異的であり不活性型異性体には認められなかった。この骨吸収抑制活性は熱及びtrypsinにより失活することから蛋白性因子と考えられた。この因子は副甲状腺ホルモンや1.25水酸化ビタミンDなどのホルモンのみならずinterleukin-1や6などのサイトカインによる骨吸収も抑制した。この因子は骨芽細胞と破骨細胞との密接な接触などを介して破骨細胞の形成・機能の調節に重要な役割を果たすものと考えられ、その同定をはかるべく精製を進めている。
2.骨での成長因子の産生・作用の調節機構の解明:骨基質中に蓄積され骨形成の維持に重要な役割を演じているtransforming growth factor-β、bone morphogenetic proteinなどの成長因子の産生調節および作用発現の調節機構について検討した。これらは骨基質中のproteoglycanとりわけdecorinと結合親和性を示し、しかもdecorinとの結合によりその作用も増強されることが明かとなり、更に詳細な検討を進めている。

研究成果

• [文献書誌] Kawaguchi,H.et al: "Immunohistochemical demonstration of bone morphogenetic protein-2 and fransforming growth factor-β in the ossification of the posterior longitudinal ligament of the cervical spine" Spine. 17. 33-36 (1992)
• [文献書誌] Matsumoto,T.et al: "Effect of 24,25-dihy droxyvitamin D_3 in osteaclasts" Proceedings of the Society for Experimental Biology and Medicine. 200. 161-164 (1992)
• [文献書誌] Okazaki,R.et al: "Transcriptional activation of C-fos and C-jun proto-oncogenes by serum growth factors in osteoblast-like MC3T3-E1 cells" Journal of Bone and Mineral Research. 7. 1049-1055 (1992)
• [文献書誌] Matsumoto,T.et al: "Matrix proteins regulate the proliferation of osteoblastic cells by affecting the actions of IGF-I" Osteoporosis International. (1993)
• [文献書誌] Ishii,T.et al: "Estrogen stimulates the elaboration of cell/matrix surface-associated inhibitory factor of osteoblastic bone resorption from osteoblastic cells" Biochem,Biophys.Res.Commun.(1993)
• [文献書誌] Takeuchi,Y.et al: "Effects of transforming growth factor-β and L-ascorbate on synthesis and distribution of proteoglycans in murine osteoblast-like cells" Journal of Bone and Mineral Research. 8. (1993)
• [文献書誌] Okazaki,R.et al: "Calcium Regulating Hormones and Bone Metabolism Basic and Clinical Aspects" Elsevier Science Publishers, (1992)
• [文献書誌] 福本 誠二 他: "Annual Review 内分泌、代謝1993" 中外医学社, 284 (1993)