研究概要 |
骨粗鬆症の発現機序を明らかにし、予防・治療法を確立する目的で以下の検討を加えた。 1.骨吸収促進ホルモンにより骨芽細胞から分泌される骨吸収促進因子:骨吸収促進ホルモンである1,25(OH)_2Dにより骨芽細胞から分泌される骨吸収促進因子の精製を行った。この因子はheparin親和性を示し、細胞表面から高濃度のNaClにより溶出された。逆相HPLC、ゲル濾過により精製を進め二つの粗精製蛋白を得たが、その同定にまでは至らなかった。 2.Estrogenにより骨芽細胞から分泌される骨吸収抑制因子:閉経後骨粗鬆症はestrogenの欠乏によりもたらされる。Estrogen受容体は骨芽細胞に存在することから、estrogenが骨芽細胞からの骨吸収調節因子の分泌に及ぼす影響について検討を加えた。その結果、estrogenが骨吸収抑制因子の分泌を高めること、この因子はheprin親和性を有し加熱およびtrypsinにより失活する蛋白性因子であること等が明らかとなった。その同定が今後の重要な課題である。 3.破骨細胞の形成・機能の調節機構:24,25(OH)_2Dが破骨細胞の形成抑制作用を持つことを明らかにし、その骨吸収抑制作用の少なくとも一部がこの様な機序を介することを示した。また破骨細胞の骨吸収能は細胞外Ca濃度の上昇により抑制されるが、細胞外Caの上昇が内向性Kchannelを抑制することにより脱分極を抑制することを示した。 4.骨芽細胞における成長因子の産生・作用の調節機構:骨基質中に蓄積され骨吸収に伴い溶出される成長因子のうち骨形成の維持に重要な役割を果たすtransforming growth factor(TGF)-βの作用調節機構について検討を加えた。骨芽細胞は長期培養により細胞分化が進む。そして基質合成期には多量のI型、II型TGF-β受容体が発現し、TGF-βに反応して増殖の抑制、基質蛋白合成の抑制が見られるのに対し、石灰化期には受容体の発現が低下し、作用の発現も抑制されることが明らかとなった。
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