研究概要 |
家族性高コレステロール血症(FH)の成人患者180例(男/女:85:95)のうち,とくに明らかな冠動脈疾患(心筋梗塞,CABG,PTCA,高度な狭心症)を有する30例を中心として冠動脈硬化の危険因子の分析をおこなってきた。研究成果ならびに進行状況については以下の通りである。 (1)冠動脈疾患(CHD)の頻度は男性20%,女性14%であり,男性でやや頻度が高い傾向が認められた。 (2)未治療時の血清コレステロール値が著しく高値な患者ではCHDが発症し易かった(コレステロール値が400mg/d1以上と以下とでは各々30.0vs12.1%の頻度であった)。 (3)CHDに関する他の危険因子について:CHD(+)のFH患者は高脂血症(19.2%),糖尿病(10%),肥満(23.3%)などの危険因子をもち、男性患者ではほとんどが喫煙(+)であった。 (4)凝固線溶系の分子マーカーについては異常は認められなかった(この結果については現在欧文誌に投稿中である。)。 (5)Lp(a)はCHDの独立した危険因子として最近注目されている。FH患者では高Lp(a)血症の頻度が明らかに高率である。(このことに関しては現在,欧文雑誌Metabolismにin pressである)しかし,CHD(+)の患者で高Lp(a)血症の頻度がとくに高いというわけではなかった。 (6)主要組織適合抗原HLAの分析はCHD(+)と(-)の患者を併せて35例についておこなった。CHD(+)の患者ではHLA-C1及びHLA-DR9の頻度が低いのが特徴であった。 (7)LDLーレセプターの遺伝子解析の結果,第9-10エキソンが欠損した新しい遺伝子変異を発見した(この症例に関しては1992年度日本動脈硬化学会冬期大会において発表した)。
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