研究分担者 |
田川 まさみ 千葉大学, 医学部附属病院, 医員
細田 和彦 千葉大学, 医学部附属病院, 医員
横須賀 収 千葉大学, 医学部, 助手 (90182691)
今関 文夫 千葉大学, 医学部, 助手 (40223325)
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研究概要 |
劇症肝炎患者に感染したB型肝炎ウイルス遺伝子の核酸配列を決定し,非劇症肝炎例と比較した。輸血後肝炎劇症化3例,夫婦間感染劇症化3例,散発性劇症化2例,キャリア-からの重症化6例である。対照として10名の通常の急性肝炎を検索した。PCR法によりDNAが回収できたのは重症化例14例中10例であった。輸血後肝炎劇症化2例,キャリア-からの重症化例全5例は変異株であった。ここでいう変異株とはPreーCore領域に停止コドンを有し,eAgを作れない株のことである。なお,夫婦間感染劇症化3例はPreーCore領域の変異は見られなかった。10名の通常の急性肝炎例での検討では変異株は一例も見い出されなかった。以上の結果から,B型肝炎ウイルスはPreーC領域に変異を有するか否かに大別できることが示された。しかし,劇症肝炎の一部にはPreーC変異株が見つからない点も明らかになった。最近の研究はウイルスの抗原,Tリンパ球のReceptor(TCR),11LA抗原の三者の関係により細胞障害が生じることが分子レベルで解明されつつある。ことにTCRにより認識されるウイルス抗原の認識部位(E pitope)は,9個程度のアミノ酸で構成されている。したがって,ある抗原,たとえばHB_c抗原が全体としてリンパ球に認識されるなどというおおまかなものでなく,コア蛋白のどのアミノ酸がTリンパ球に認識されるのかという問題である。そこで,まず無症候性キャリア-(年余にわたって肝機能が正常な者」と慢性肝炎患者のコア抗原領域(183アミノ酸)の検索を行った。その結果,無症候性キャリア-ではコア抗原領域は全く変異がなかったのに比し,慢性肝炎患者では高頻度にコア領域,ことにコドン84からコドン101の18個のアミノ酸の領域に変異が認められた。この事はTリンパ球に攻撃される目標が限定されている可能性が出てきた。今後はこの領域の変異と劇症肝炎発症の機序解明を行いたい。
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