研究概要 |
B型肝炎ウイルス感染症は、一過性感染では自然寛解する急性肝炎から劇症肝炎まで、また持続感染では無症侯性キャリアから慢性肝炎、肝硬変まで様々である。これらの病態の違いがなぜ起こるのか現在は不明である。 HBs抗原サブタイプadrに感染したe抗原陽性の無症侯性キャリア10例と慢性肝炎患者20例について検索した。10例のe抗原陽性の無症侯性キャリアでは、既報のサブタイプadrのCoreアミノ酸配列と比較すると1ヶ所も変異を認めなかった。一方慢性肝炎患者では、20例中16例に少なくとも1ヶ所のアミノ酸変異が見られ、さらにその変異はCoreコドンの84-101に集中してみられた。この領域はCore peptideの10%に相当するが、変異の54%がこの領域に起こっていた。 次にB型肝炎(全例サブタイプadrに感染)にて死亡した以下の例について検索した。劇症肝炎:2例、慢性肝炎急性増悪死亡例:5例、対照として急性肝炎自然寛解例:6例。劇症肝炎2例と慢性肝炎急性増悪にて死亡した5例では、慢性肝炎でみられた変異とほぼ同様でCoreコドンの84-99に高頻度に変異がみられた。またPre-C変異は劇症肝炎2例中1例に、急性増悪5例中4例に認められた。一方、自然寛解した急性肝炎6例ではPre-C,Coreとも全く変異がなかった。 以上に示した結果より、Coreコドン84-99に変異有するウイルスにより強い肝障害が引き起こされたと考えられ、さらにその部位が細胞障害性T Cellのエピトープの一つである可能性が示唆された。
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