研究概要 |
類洞壁内皮細胞(Sinusoidal endothelial cell,以下SEC)はKnookらの方法に準じて分離した。採取された細胞がSECであることは電顕による形態学的観察,acetyl LDLの取り込みによって確認された。分離SECを18時間培養後,正常者および慢性活動性肝障害患者血清より分離したIgGと30時間培養し,培養ディツシュへの生着率を検討した。自己免疫性肝炎由来のIgGは正常者,ウィルス性慢性肝炎患者由来のIgGと比較して有意に生着率を減少させた。グルタルアルデヒド固定SECを,自己免疫性肝炎患者血清とインキュベ-トすると,10例中9例に正常血清とインキュベ-トした場合より有意に高いIgGの結合がみられた。一方,ウィルス性慢性肝炎,原発性胆汁性肝硬変患者では、それぞれ1/13,1/7に有意に高い結合がみられたに過ぎない。このことは自己免疫性肝炎患者血清中にはSECと反応するIgGクラスの抗体が存在することを示している。患者血清IgGをヘパリンセファロ-ズで分画し,SECとの結合性をみたところ,ヘパリン結合IgGは非結合IgGと比較して3倍近い結合を示した。また,SEC結合IgGはSECをヘパリナ-ゼ,ヘパリチナ-ゼ処理すると減少した。したがって抗体はSEC表面のヘパリ様物質を標的としていると推定された。また,ヘパリン結合IgGのSECへの結合はヘパリンが同時に存在すると減少したことも,SEC抗体の標的がヘパリンであることを示している。私達の見出したSEC抗体が他の血管内皮細胞と反応するかどうかは今後の課題である。また,SEC抗体はSLE患者血清中にも高頻度に存在することを見出しており,SEC抗体が肝障害にいかなる関連を有するのか明らかにすることが今後の課題である。
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