研究概要 |
潰瘍性大腸炎の多くの症例が,再燃緩解型か慢性持続形を呈することより,この炎症の遷延化に免疫遺伝子側にある偏倚があると考えられる。また,HLAーclass II抗原には免疫応答遺伝子の存在も指摘されている。本研究では従来の血清学的タイピングに加え,HLAーDP抗原の遺伝子タイピングおよびTNFβ遺伝子の多型性を検討した。 方法:診断基準を満たす日本人潰瘍性大腸炎患者39例,日本人正常人99例を対象とした。高分子DNAは患者および対照末梢血より,猪子らの方法に従い抽出した。(1)HLAーDP遺伝子タイプング DPB1遺伝子タイピングは前田らの方法で行った。(2)TNFβ遺伝子多型性の検出,AKIBA Bcell line由来のコスミドクロ-ンより得たTNFβ遺伝子プロ-ブを用いた。抽出した高分子DNAを制限酵素で切断,0.7%アガロ-ス中で泳動後ナイロンフィルタ-上に転写し, ^<32>P標識プロ-ブとハイブリダイズし,5.5kbと10.5kbのフラグメントを検出した。(3)NIH法による血清学的HLAタイピングも行った。 成績:(1)日本人潰瘍性大腸炎ではHAーDPw9(DPB1)が有意に高値であった(relative risk=6.1,x^2=14)、(2)本症ではTNFβは10.5kbを有していた,(3)本症ではHLAーBw52を58%のものが有していたが,これを有しない者ではB13,B44を有していた。Bw52,B13,B14は第3超可変部領域のほぼ全長にわたる63〜77番目のアミノ酸が同一配列を有していることより,本症の疾患感受性にこれらのB抗原が関与していことが示唆された。 結語:本症の免疫遺伝ではHLAのBW52>PPw9>DR2が有意に保育され,A24ーBw52ーTNFβ10.5KbーDR2ーDQw1ーDPw9のハプロタイプが強く保持されていた。B抗原のBw52,B13,B44は相同性のアミノ酸配列を有した。本症患者に免疫遺伝の偏倚が示唆された。
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