研究概要 |
DUーPANー2(Dー2)に対する単クロ-ン抗体を免疫原とし,ラットに免疫することによりポリクロ-ナル抗イディオタイプ抗体(PーId),マウスに免疫し,ハイブリド-マ法にて単クロ-ン抗イディオタイプ抗体(MーId)を作製した。得られた抗体は、いずれもDー2抗体と特異的に結合し,Dー2抗原抗体反応を競合的に阻害することより,Dー2抗原の内部イメ-ジを有すると考えられた。このMーIdをマウスに免疫するとDー2抗原と反応する抗体(Abー3)が誘導され,これはDー2の抗原抗体の結合反応を濃度依存的に阻害した。Abー3のDー2抗原陽性癌細胞に対する細胞性免疫反応を検討すると,補体依存性(CDC)活性や特異的細胞障害性T細胞(CTL)を誘導し得なかったが,抗体依存性(ADCC)活性を誘導しえた。また,MーId免疫マウス脾細胞中にはMーIdと反応するB細胞が存在した。このようにMーIdの免疫によりDー2抗原を認識し,ADCC活性を有する抗体の誘導されることが示唆された。 PーIdおよびMーIdをそれぞれ国相化したEIA法を作製し,各種消化器癌患者血清中の抗Dー2抗体価を測定した。癌患者血清の抗Dー2抗体価の陽性率はPーId法で42%(42/101),MーId法で33%(36/108)であった。一方,良性の肝胆膵患者での偽陽性率はPーId法で42%(13/30),MーId法で21%(7/33)と後者で特異性は良好であった。癌患者血清の抗原値と抗体価との間には相関性はみられず,各々の陰陽性の解離するものがPーId法で48%,MーId法で44%にみられた。Dー2抗原陰性群中,PーId法で44%(21/48),MーId法で30%(18/60)に抗体価が陽性であった。 以上のように,Id抗体を用いたDー2抗体価測定法は血中Dー2抗原値の陰性の癌症例の診断にもかなり期待できると考えられる。
|