研究概要 |
日本人の自己免疫性肝炎31例とHLAーB54,DR4,DQ4との相関については1990年HEPATOLOGY(Vol:12:1300ー1304)にて報告した。本年は自己免疫性肝炎患者55例に対し血清学的タイピングに加え、HLAクラスII抗原について我々が開発したPCRーRFLP(Polymerase chain reactionーRestriction Fragmert Length polymorphism)法によりDNAタイピングを行い、本疾患の疾患感受性遺伝子の解析を行った。血清学的タイピングでは本疾患とHLAーB54 DR4,DRW53,DQ4との有意の相関を認めた。特に約90%の患者がHLAーDR4陽性で、本疾患と最も相関が強く、DR4陰性者例はいずれもDR2陽性だった。そこで我々はPCRーRFLP法を用いて患者のクラスII抗原のDNAタイピングを詳細に検索した。DR4は塩基配列レベルで8種類のDR2は4種類のalleleに細分されるが、DR4の8種類およびDR2の4種類のalleleの分布は正常健常人と患者群では変化はなく、DR4またはDR2の各alleleに共通のアミノ酸配列の発症への関与が疑われた。以上よりHLAーDRB1鎖の各alleleのアミノ酸配列を本疾患感受性群と抵抗群とで比較すると、DR4ーalleleまたはDRー2alleleを有する感受性群ではHLAーDRB1鎖の第13番目のアミノ酸が全例で塩基性アミノ酸であるのに対し、この他のHLA抗原、つまり抵抗群では全例中性アミノ酸であり、このアミノ酸が日本人の自己免疫性肝炎の発症に強く関わっていると示唆された(Immunogenetics,1992,in press)さらにDR4・DR2以外のDRB1鎖のDNAタイピングでは本疾患群と健常群との間に差はなかった。DQA1鎖ではDQA1*0301が、DQB1鎖ではDQB1*0401がそれぞれ健常群に比し本疾患群で有意に増加していたがこれはDR4との連鎖不平衡による結果と考えられた。またDPB1鎖では本疾患群と健常群とでは有意の差は認められなかった。以上は現在、GASTROENTEROLOGYに投稿し、revised paperが審査中である。
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