研究概要 |
自己免疫性肝炎I型は疾患としての独立性は認められたが,その発症機序および肝細胞障害機序は不明である。我々の一連の研究から(遺伝免疫学的検索から),遺伝免疫学的背景のあることが強く示唆された。すなわち,自己免疫性肝炎I型はHLA-B54,DR4と強い相関があった。さらに本疾患の疾患感受性遺伝子検索のためPolymerase chain reaction-restriction fraction length polymorphysm(PCR-RFLP)法を用いたHLA対立遺伝子の分子生物学的解析では,HLA-DRB1鎖の13番目のアミノ酸が塩基性アミノ酸であることが本疾患の発症に強く関っている可能性が判明した。 一方,本疾患の標的抗原が肝細胞膜にのみ発現するアシアログリコ蛋白受容体(ASGP-R)である可能性が欧米の研究者より報告されている。そこで日本人の自己免疫性肝炎I型の患者血清中にASGP-Rに対する抗体(ASGP-R抗体)がどの程度の頻度で検出されるか検索した。その結果ASGP-R抗体は自己免疫性肝炎I型では30検体中28例(92%),原発性胆汁性肝硬変(PBC)では50例中12例(24%),ウイルス肝炎では50例中10例(20%)であり,自己免疫性肝炎I型に有意に高率であった。さらにステロイド治療を行い肝機能検査が正常化後の陽性率は30%と著減した。以上のことから自己免疫性肝炎I型の発症機序としてASGP-Rが重要な役割を担っていることが示唆された。 今後ASGP-R抗体測定法の確立,ASGP-R抗体産生B細胞のエピトープ解析,本疾患における肝細胞障害の機序の解明,HLA-DR抗原分子と標的抗原であるASGP-RのT細胞エピトープとの関連の解析等が重要な研究課題である。
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