平成3年度の研究費の追加交付の内定が平成3年10月、研究費交付が平成4年2月4日であったため、研究の進行に若干の遅れが生じたと思う。胃粘膜防御における細胞骨格、特に、アクチンの役割を明らかにする事が本研究の目的である。我々の注目したアクチンのSーthiolationの反応は、酸化ストレス下での細胞骨格のdynamicsの調節に非常に重要な役割を果たしているのを明らかにした。急性胃粘膜病変で観察される胃粘膜細胞の剥離のメカニズムを調べるため、酸化ストレスを負荷した胃粘膜培養細胞で剥離のモデルを作成し、胃粘膜細胞の剥離にアクチンの過重合とcrossーlinkingが関与している事を明らかにした。細胞内グルタチオンは、アクチンのSーthiolationを介してこの細胞骨格の不可逆的な変化を防御してた。アクチンのSーthiolationはアクチンのSH基の自動酸化を防ぎ、Sーthiolationに伴うアクチン自身の生理活性の変化によりアクチンの過重合反応を抑え、かつ脱重合を促進し、アクチンの過重合とcrossーlinkingを防ぎ、細胞骨格のdynamicsを保持していると考えている。また、培養胃粘膜細胞以外のSーthiolationについては、多くの成果が得られ、その成果を胃粘膜細胞の研究に行かす事が出来たと思う。現在、培養胃粘膜細胞のSーthiolationとその保護作用についての論文を投稿中である。研究成果は、別表のごとく著書として発表した他、日本医学会総会シンポジウム、日本生化学会、アメリカ合衆国細胞生物学会、アメリカ合衆国消化器病学会、比叡山シンポジウムで発表した。現在、平成3年度の研究費にて購入した備品を用いて、他のSーthiolationを引き起こす蛋白質の同定と、エタノ-ルによるSーthiolationの解析を行っており、平成4年度にはさらに多くの重要な成果を得られると確信している。
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