研究概要 |
気道上皮細胞の分泌に塩素イオン移動が関与し、嚢胞性線維症(cyctic fibrosis、CF)の原因遺伝子であるcyctic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)はその本体が塩素イオンチャンネルであることが明らかになった。本研究は日本の慢性気道湿性疾患(びまん性汎細気管支炎、気管支拡張症など)で本遺伝子異常が関与する可能性を検索し、気道系の他の塩素イオンチャンネルの存在を検討した。 1.PCR法によるCFTR遺伝子の増幅、single strand conformational polymorphism(SSCP)法による塩基変異の検出。CFTR遺伝子はexon数が多いので、当初気管支鏡(FBS)下に擦過した気道上皮よりmRNAを採取し、RTーPCRで増幅して塩基変異解析を進める予定であった。しかし当該患者FBS検査に同意が得にくく、多数例取扱に苦慮した。この間CFTRゲノム遺伝子構造解析の報告(Zielenski J.et al,Genomics,10,214,1991)がなされたので末梢白血球抽出DNAで各exon毎に対応することが可能となった。本年度はCFTR consortium加盟施設の塩基変異情報によりcaucasoidで多数の変異を認めるexon,4,7,10,11,19,20に関して、上記気道湿性疾患患者18例を検索した。SSCP法によりexon10では18例中3例、exon11では18例中1例、exon19では18例中1例に泳動位置の変化を認め、塩基配列決定によりMet^<470>(ATG)ーVal(GTG),I1e^<556>(ATA)ーVal(GTT)の変化をみた。これらはCFTR consortiumに未報告の変異であり、その意義は今後多数症例で検討する必要がある。 2.気道上皮細胞における他の塩素イオンチャンネルの検索。電気エイ発電器官よりクロ-ニングされた塩素イオンチャンネルの塩基配列情報より5'ー3'、3'ー5'方向に合計10個のプライマ-を合成し、ヒト気道上皮細胞抽出のmRNAよりRTーPCR法を用いて増幅されるバンドの有無を検討した。しかしこの方法ではヒト気道上皮に電気エイ塩素チャンネル類似遺伝子の存在を示す結果は得られなかった。
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