研究概要 |
筋肉の状態とNMRパラメ-タ-(緩和時間T_1,T_2)との関係を明らかにするために、まず筋組織の違いと緩和時間との関係について、in vitroでの測定により検討した。対象はICR mouseで、typeIとしてひらめ筋、typeIIとして前頚骨筋を使用した。装置は機器分析用NMRスペクトロスコピ-(90MHz Fx90A,JEOL)で、脱血屠殺後、試料を採取し、直ちに内径2mmのNMR試料管の中に筋肉をいれ、15分以内にT_2の測定を開始した。T_1は反転回復法、T_2はspin echo法によった。その結果、T_1ではtypeI:1.032±0.026sec(n=12),typeII:1.043±0.016sec(n=11)と統計的有意差は認めないものの、ややtypeII筋線維のほうが長い傾向が認められた。T_2は2成分から成り、早い成分T_<2f>はtypeI:30.90±1.92msec,typeII:32.40±1.14mesc、遅い成分T_<2s>はtypeI:52.08±4.40msec、typeII:56.14±3.66msecと、何れもtypeII線維の方が有意に延長していた(p<0.05)。筋線維の緩和時間の差には、(1)各筋線維の水分含有量の違い、(2)各筋線維のATPase活性の違いを初めとする、巨大分子の構造的違いに起因する結合水の結合状態の差などが関係すると考えられる。本研究では通常、水分含有量と強い相関の認められるT_1に有意差が認められなかったことから、筋線維内の巨大分子の構造的違いが緩和時間の差に関係すると考えられた。次にin vivoで筋肉の緩和時間測定を試みた。生体計測用NMR装置(2.0T,30cm径、BEM250/80、大塚電子)において、2cmの表面コイルを用い、緩和時間を測定するパルス系列を作製した。通常のspin echo法では、皮膚や皮下組織の水の影響を受けるため、測定領域の選択ができるデプスパルス法を採用した。コンピュ-タ-の容量の制限により、完全な領域選択は出来なかったが、通常のspin echo法より脂肪層の影響が小さいことをファントムで確認した。
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