研究概要 |
本年度の研究について,まず昨年度に引き続き行っている本封入体の生化学的分析について述べる。脳組織全体のホモジュネートの比較では,明かな差は認められないため,ユビキチン化されていることを指標に封入体を部分精製した。それを用いて本封入体がSDSに可溶性であることを確認するとともに,SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にて検討したところ約32KDと40KDのタンパクが,抗ユビキチン抗体と抗αBクリスタリン抗体の両者で認識され,ユビキチン化されたαBクリスタリンが本封入体の構成成分である可能性が初めて生化学的に示された(投稿準備中)。現在さらに,これらの分子成分が微細構造上のどれに相当するか検索を進めるとともに,他の構成成分についても免疫細胞化学的,生化学的に研究を進めている。 オリゴデンドログリアの培養系を用いた研究では,米国ウィスター研究所からcell lineの供与を受け,長期培養におけるMSA患者髄液や脳抽出液の影響を検討した。患者脳の抽出液にてαBクリスタリンが増加している可能性を示すとともに,それを添加した培養オリゴデンドログリアでもαBクリスタリンが発現している可能性が示された。現在,条件を変え,あるいは症例を増やして確認を進めている。 症例の脳組織を用いた研究では,昨年度報告した本封入体の分布等に関する研究が出版され,さらに本症の一次運動野に層状の特徴的なアストログリアの増生を発見し,新しい病変として報告した(研究発表参照)。
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