合成アセチルコリン受容体立体構造と筋無力症病態解析,治療に関する分子免疫学的研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03454239
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 高守 正治 金沢大学, 医学部, 教授 (60039815)
• 研究分担者: 奥村 誠一 金沢大学, 医学部附属病院, 助手 (60152435) ; 坂戸 俊一 金沢大学, 医学部附属病院, 助手 (10142275) ; 井手 芳彦 金沢大学, 医学部附属病院, 講師 (10100835) ; 松原 四郎 金沢大学, 医学部, 講師 (00143884)
• キーワード: アセチルコリン受容体 / 合成ペプチド / 抗体 / 免疫原 / 疾患モデル動物 / 重症筋無力症

研究概要

重症筋無力症の成立に主役を演ずる抗体の標的であるアセチルコリン受容体(AChR)を分子レベルからとらえ、その分子・立体構造と免疫の観点から、本病の病態と治療を考案することを目的として研究を開始した。本病発症3機序の1つを演ずるAChと受容体との結合阻害抗体の、AChR分子構造中の標的領域と立体構造修飾を初年度の検討課題とした。1.AChの受容体結合には、そのαサブユニット残基番号α189(Tyr),α190(Tyr),α195(Asp)の3アミノ酸の存在が重要なことに鑑み、またT細胞認識領域を含む可能性も勘案して,α183ー200領域を選び、3残基位で構成アミノ酸が異なるヒトおよびシビレエイのアミノ酸配列に照合、2種類のペプチドを合成した。2.シビレエイAChRα183ー200を抗原としてルイスラットを免疫すると阻害型抗体主役の疾患モデルを作出し得たが、ヒトα183ー200にはこの様な免疫原性を認めず、この違いを立体構造の相異に求めた。すなはち、両ペプチドを核磁氣共鳴法を用いたプロトン間距離情報を基に原子レベルで構造解析、コンピュ-タ-グラフィックを行うと、前者にβタ-ン構造のつよい免疫原構造を証明した。3.人工的アミノ酸配列によって上記のペプチドに立体構造修飾を加え、免疫原性を高めるべく数種のモデルペプチドを合成、ラットを免疫し比較したところ、α107ー116・AspーProーGlyーGly・α190ー195に最も高い疾患誘導率をみとめた。4.天然AChRを抗原として免疫し発症した疾患モデル動物の血中抗体を、合成ペプチドで検定したところ、抗(α107ー116・α190ー195・α107ー116)抗体価が最も高く、天然AChRを抗原に用いて測定した阻害型抗体価と相関した。すなはち、抗体認識性と疾患誘導の免疫原性とでは、異なる立体構造が求められることが示唆され、治療用抗原の合成に重要な情報となった。

研究成果

• [文献書誌] 高守 正治: "A synthetic peptide,Torpedo californica α183ー200,of the acetylcholine receptor as a tool for immunoadsorption via plasma perfusion in myasthenia gravis" Artificial Organs Today. 1. 53-60 (1991)
• [文献書誌] 高守 正治: "臓器特異的自己免疫疾患動物モデルにおける最近の進歩ー重症筋無力症" 臨床免疫. 23. 981-993 (1991)
• [文献書誌] 高守 正治: "重症筋無力症におけるアセチルコリン受容体合成ペプチドを吸着剤とした免疫療法の検討" 集中治療. 3. 319-320 (1991)
• [文献書誌] 高守 正治: "免疫性ペプチドー高次構造と抗体産生に関する問題点" 免疫薬理. 9. 134-135 (1991)
• [文献書誌] 高守 正治: "重症筋無力症" 臨床と研究. 68. 1019-1028 (1991)
• [文献書誌] 高守 正治: "Myasthenogenicity in the main immunogenic region of acetylcholine receptor as modified by conformational design" Journal of the Neurological Scineces. (1992)
• [文献書誌] 高守 正治: "Muscarinic receptorーmediated modulation of acetylcholine release in mice with passively transferred LambertーEaton myasthenic syndrome" Muscle and Nerve. (1992)
• [文献書誌] 高守 正治: "神経と免疫ー重症筋力症とLambertーEaton筋無力症候群" Clinical Neuroscience. (1992)
• [文献書誌] 井手 芳彦: "Treatment of Myasthenia Gravis with a specific immunoadsorbent bound to acetylcholine receptor peptide α183ー200 In:Therapeutic Plasmapheresis" ICAOT Press(Cleveland,USA), 6 (1991)
• [文献書誌] 高守 正治: "臨床神経内科学(第2版)(分担執筆)" 南山堂(東京), 22 (1991)
• [文献書誌] 高守 正治: "シリ-ズ最新医工学治療ー吸着治療マニュアル" 金原出版(東京), (1992)
• [文献書誌] 高守 正治: "新筋肉病学(分担執筆)" 南江堂(東京), (1992)
• [文献書誌] 高守 正治: "レセプタ-基礎と臨床(分担執筆)" 朝倉書店(東京), (1992)
• [文献書誌] 高守 正治: "現代病理学大系第21巻A(分担執筆)" 中山書店(東京), (1992)