研究概要 |
重症筋無力症の発症機構に関わる免疫反応の標的-アセチルコリン受容体分子構造の中から臨床への応用を期して,抗体反応領域を特定した上,立体構造修飾を加えてその有意性を高める検討を行い以下の結果を得た。 1.結合型抗アセチルコリン受容体抗体(受容体崩壊促進抗体)標的領域α67-76を骨格とし,その延長および両端にシステイン残基を附加することによってS-S結合でβターン(抗体結合可能性構造)を強調する目的で,8種のペプチド(ヒトおよびシビレエイ残基配列それぞれ4種)を合成した。すなわち,CKGGLR-α67〜76-C,KKC-α63〜77-C,KKC-α62〜77-C,KKC-α61〜77-Cである。 2.これらのペプチドについて抗MIRモノクローナル抗体(重症筋無力症成立に主役を演ずる受容体崩壊促進作用抗体)との反応を,non-MIRモノクローナル抗体を対照としてELISA法で検定した結果,いずれも著明に反応することを明らかにした。3.重症筋無力症30例について,これら合成ペプチドを抗原として検定した結果,CKGGLR-α67〜76-Cを抗原として17%,KKC-α63〜77-Cで7%,KKC-α62〜77-Cで17%,KKC-α61〜77-Cで17%の陽性率を得た。一方構造修飾を加えないα60〜80では陽性例をみとめなかった。4.平成3年度報告で阻害型抗体(アセチルコリンと受容体との結合を阻害する抗体)の標的領域として明らかにしたα183-200領域の合成ペプチドを吸着剤として,患者血液の体外循環中に分離血漿と反応させ,病原抗体を選択的に除去する血液浄化療法を,重症筋無力症9例に施行(計27回施行)し,その2/3に有効であった。有効例の使用吸着剤の溶出検体には,著明な阻害型抗体活性をみとめた。
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