研究概要 |
パ-キンソン病における主要な病理所見は、dopamine neuronの変性消失である。脳内では、tyrosine→Lーdopa→dopamineという経路によりdopamineが形成される。Lーdopaの一部は3ーOーmethyldopaにも変化する。しかし、これらのdopamine前駆物質がパ-キンソン病の脳においてどのように変化しているかについての知見は乏しい。 我々は末治療のパ-キンソン病患者とほぼ年齢層の対照例について、髄液中のこれらの物質の濃度を測定し、次の結果を得た。 (1)パ-キンソン病例では、tyrosine濃度が有意に増加していた(対照例の200%)。これはtyrosine hydroxylaseの低下を反映していると考えられた。 (2)Lーdopa(対照例の20%)、dopamine(対照例の70%)、3ーOーmethyldopa(3ーOMD)(対照例の10%)が有意に低下していた。 (3)パ-キンソン病の重症度が高いほど、dopamine濃度が有意に低下する(r=0.55,p=0.04)のに対し、Lーdopa濃度は逆に有意に上昇した(r=0.57,p=0.03)。これは、dopa decarboxylaseが疾患の進行とともに減少していることを示唆している。 (4)dopamine/Lーdopa比と3ーOMD/Lーdopa比は、対照例でもパ-キンソン病患者でも直線的な相関を示した。しかし、パ-キンソン病患者では対照例に比べて、3ーOMD/Lーdopa比とdopamine/Lーdopa比の割合が約1/9と著しく低かった。すなわち、パ-キンソン病では、Lーdopaから3ーOMDへの変化が代償的に抑制されていることが示唆された。以上の示した所見がLーdopa治療により、どのように変化するかについて今後検討する予定である。
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