本研究は自己免疫性脳炎(EAE)の発症機序を解析し、新しい免疫療法を開発すること、得られる情報をヒトの病気多発性硬化症(MS)の解明、治療法開発に応用することを目的とする。1)昨年はSJL/Jマウス由来ミエリン塩基性タンパク(MBP)反応性脳炎誘起性T細胞クローンのT細胞受容体解析から、Vbeta使用は多様であるが、CDR3領域に保存された配列が見られることを見出した。そこで、CDR3領域の保存された配列をもとにペプチドを合成し動物に接種したところ、むしろ病気の悪化が見られた。このことは、この領域が重要な領域であることを意味しており現在病気を抑制する配列の検索をすすめている。2)SJL/Jマウスの脳炎誘起性T細胞クローンが使用するVbeta17aのCDR2ペプチドを動物に接種すると、クラスI拘束性ダブルネガティブサプレッサーが誘導され、そのラインの樹立に成功した。そのラインはin vivoで病気を抑えた。3)脳炎誘起性T細胞クローンを活性化して動物に接種すると抗エルゴタイプが誘導された。この抗エルゴタイプが認識する物質に体するモノクローナル抗体の作製に成功し、この抗体を用いて、その物質の解明に着手した。4)多発性硬化症患者末梢血由来T細胞のMBP、プロテオリピッドプロテイン(PLP)反応性を検討し、PLP免疫優位部位が少しずつ明らかになった。更に、PLPペプチド反応性T細胞クローンを樹立し、T細胞受容体を解析した。Vbetaの使用は多様であったが、CDR3領域にユニークな配列を有するクローンが見出された。
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