研究課題/領域番号 |
03454248
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永井 良三 東京大学, 医学部(病), 助教授 (60207975)
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研究分担者 |
中原 賢一 東京大学, 医学部(病), 医員
西村 敬史 東京大学, 医学部(病), 医員
黒尾 誠 東京大学, 医学部(病), 医員
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キーワード | 血管平滑筋 / ミオシン / SM1 / SMemb / 遺伝子 / プロモーター / P19 / 分化 |
研究概要 |
血管障害時に増殖する平滑筋細胞は筋フィラメントの多い収縮型形質から、フィラメントの乏しい合成型形質への転換を伴う。このような平滑筋の形質変換機構を解明するアプローチの一つとして、平滑筋ミオシンの遺伝子発現機構を解明することが重要である。すでにこれまでの検討で、収縮型平滑筋はSM1遺伝子、合成型平滑筋はSMemb遺伝子の発現が優位となることが明らかとなっている。本年度はすでに単離したSMemb遺伝子のプロモーター領域の解析をさらに進めると共に、あらたにSM1遺伝子のプロモーターも単離し、その解析に着手した。 SMemb遺伝子はTATAboxを持たない。SMemb遺伝子のプロモーター領域をさまざまな長さに欠失させてルシフェラーゼ遺伝子に連結して継代した合成型平滑筋細胞に導入し、ルシフェラーゼ活性を測定すると、転写開始点から-100bp付近にポジティブに作用する最も重要なエレメントが存在することが示された。このエレメントは従来知られていたものとは異なるもので、これに特異的に結合する蛋白が存在することはゲルシフトアッセイによって明らかとなった。今後はSMemb遺伝子に結合する転写因子の単離を行なう予定である。一方、SM1遺伝子はTATAboxを持ち、プロモーター領域にE-box、Mef-2、Mef-3などの骨格筋分化に重要なエレメントが存在する。平滑筋細胞では未だにb-HLH蛋白が見いだされていないことから、これらのエレメントが実際に平滑筋細胞分化にどのような役割を担っているかは今後の課題である。 血管障害における平滑筋増殖は成体型から胎児型形質への転換とも理解される。このためSM1やSMemb遺伝子の発現調節機構だけでなく、脱分化した平滑筋を再分化させる研究が重要である。一般に培養平滑筋細胞をSM1陽性の分化平滑筋に再分化させることは極めて困難であるが、今回我々は胎児癌細胞であるP19をレチノイン酸添加と神経系への分化阻害を行なうことにより、はじめてSM1陽性細胞に分化誘導することに成功した。これによって平滑筋特異的遺伝子発現をin vitroで検討することが可能となった。
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