研究概要 |
血管平滑筋では、細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]i)の上昇によるもの以外に、その上昇を伴わない収縮も起こり得ることが注目されている。平成3年度我々は、1mM EGTAを含むCa^<2+>-free buffer中でnorepinephrine(NE)やcaffeineにより細胞内の貯蔵Ca^<2+>を枯渇させた血管条片に種々の血管作動物質を検討した結果、endothelin-1(ET-1),phorbol 12-myristate 13-acetate(PMA),phorbol 12,13-dibutyrate(PDB)およびcaliculin-A(phosphatase inhibitor)等が比較的持続する収縮を示したが、PDB,PMAやcaliculin-Aはその時[Ca^<2+>]iの上昇は見られなかったことを報告した。以上の結果を基に、平成4年度はPDBによるミオシン軽砂(MLC)を含めた収縮蛋白の燐酸化と脱燐酸化についてautoradiographyおよびwestern blotting法により解析を試みた。Ca^2-free buffer中のPDBよる血管条片収縮時におけるMLCの燦酸化は顕著にみられたが、MLC以外の燐酸化はそれほどではなかった。20-kDa MLCのpeptide mappingでは、PDBの燐酸化部位は、C-kinaseばかりでなくMLC-kinaseによる部位の燐酸化も強く見られた。この結果よりMLCの燐酸化がCa^<2+>-非依存性の収縮においても重要と考えられたのでその脱燐酸化酵素であるMLC-phosphataseの精製とintactな血管条片におけるMLC-phosphatase活性の測定をした。MLC-phosphataseはニワトリ砂嚢より精製し、58-kDaと38-kDaそれぞれ二つずつのsubunitsよりなることを示した。またC-kinaseにより燐酸化されたcalponin(平滑筋収縮弛緩に重要と考えられているactin結合蛋白)はこの酵素により速やかに脱燐酸化された。ET-1やPDBは少なくともこの精製された酵素には影響しなかったが、PDBはintactな血管条片のMLC-phosphatase活性を低下する傾向が認められた。これらのことより[Ca^<2+>]i上昇を伴わない収縮にMLC-phosphataseが重要な役割を演じていると考えられた。以上Ca^<2+>非依存性の収縮について概ね満足のいく結果がえられた。しかしskind fiberについては、上記の収縮蛋白の影響を検討しているが技術的な困難さから十分な結果が得られていない。
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