研究概要 |
本態性高血圧の発症維持には、遺伝的要因と環境的要因が関与する。環境的要因の中では心因ストレスと食塩の役割が重要視されている。しかし高血圧発症、維持における2要因間の関係については、いまだ不明の点が多い。一方ストレス刺激による高血圧発症には、脳内GABA系の異常が報告されている。そこで我々は自然高血圧発症ラット(SHR)とその対照である正常血圧ラット(WKY)を交配させて作った、高血圧遺伝素因を有する境界型高血圧ラット(BHR)に食塩負荷を行い、環境因子による血圧上昇に中枢GABA系の異常が関与するかを検討した。(方法)8週令のBHRに8%食塩食(食塩と負荷群)と0.3%食塩食(対照群)を5週間投与後、脳室内にカニュ-レを挿入した。覚醒下にてストレス(210/分の振蘯刺激、3分間)負荷し、GABA agonist,mucimol 0.1 1.0ugとGABA antagonist,biculline 0.2,0.5ug投与前後で負荷を繰り返した。(結果)安静時平均血圧は対照群に比し、食塩負荷群で有意に上昇した。両群において、muclmol脳室内投与により、安静時平均血圧は有意に低下し、低下の程度は対照群に比し、食塩負荷群で有意に大であった。ストレス刺激時の昇圧反応は対照群に比し、食塩負荷群で有意に大きかった。mucimol脳室内投与により、食塩負荷群では、ストレス刺激時の昇圧反応が有意に減少したが、対照群では変化なかった。一方、ストレス刺激時の心拍数増加は、両群において、mucimol脳室内投与により有意に抑制された。心拍数増加の抑制の程度は、対照群に比し食塩負荷群で有意に大きかった。biculline脳室内投与により、安静時心拍数と血圧が上昇したが、両群間に差はなかった。(結論)遺伝素因を有する境界型高血圧ラットでは環境因子(食塩負荷)により脳内GABA系の機能低下が存在し、ストレスに対する過剰反応を惹起する可能性がある。
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