研究概要 |
ヒト胎児肺由来線維芽細胞HEL-O上で増殖するヒト白血病細胞株M-MOKを樹立した。組織化学的にはM-MOKはPOX陰性、エステラーゼ二重染色陰性。表面マーカー解析では、CD34+,CD33+,CD41+,CD42b+であり、DR抗原やグライコフォリンは認められない。HEL-O上のM-MOKの増殖が、HEL-Oとの直接的接触に依存するのか、あるいはまたHEL-O由来の可溶性因子に依存するのかを明らかにするために、両者の間をヌクレオポア-メンブランで隔て、M-MOK細胞の増殖を調べた。M-MOKはHEL-Oとヌクレオポア-メンブランで隔てられていても十分に増殖することから、HEL-O由来の可溶性因子がM-MOKの増殖を支持しているものと思われた。HEL-O由来のコンディションドメヂウムを培地に添加しM-MOKを培養したところ、少なくとも1カ月間はM-MOKの増殖を維持出来ることがわかった。HEL-Oと共存させたM-MOKに、種々の増殖因子あるいは細胞接着因子・レセプターに対する抗体を添加し、M-MOK細胞の増殖に与える影響について検討した。使用した7種類の抗体のうち、抗GM-CSF抗体のみが著名にM-MOK細胞の増殖を抑制した。コンディションドメヂウムによって維持されているM-MOKの増殖も、抗GM-CSF抗体によって著名に抑制された。HEL-OおよびM-MOKの産生するサイトカインについて検索するため、それぞれからRNAを抽出しノーザンブロットハイブリダイゼーションを行った。GM-CSFのプローブを用いた時に、HEL-OおよびM-MOKに陽性のバンドが検出できた。従ってHEL-O上に置かれたM-MOKの増殖機構のうち、可溶性因子が果たす増殖支持作用には、GM-CSFが大きく関与していることが明らかにされた。
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