研究課題
重症複合免疫不全症はリンパ球系の分化障害があり、T細胞・B細胞両系の発生が障害されていると考えられている疾患である。この中にはB細胞が存在する病型が存在するが、それについてどのような分化異常が免疫グロブリン産生不全をもたらしているのか、免疫グロブリン遺伝子の第3超可変領域について抽出したゲノムDNAをPCRで増幅しクローニングしてその塩基配列を検討した。この領域の長さ、D分節・JH分節の各塩基の使用頻度は健康人のものと変わらなかったが、D-J接合部におけるアンチセンス由来ヌクレオチドの存在頻度が高く、この部の遺伝子再編成に何らかの異常があると推定されたが、基本的には免疫グロブリン可変部の形成に遺伝子上の大きな異常はないものと考えられた。T細胞レセプターと免疫グロブリンとでその遺伝子再編成にかなり共通の機構が働いていると予想されるが、本症におけるT細胞の発生障害は前記の所見からそのような機構の障害によるものではなく、T細胞個有に働く機構の障害と考えられた。アレルギーに関与するIgE抗体の産生にはT細胞からのインターロイキン4(IL-4)やCD40分子へのT細胞上のリガンドの結合が促進的に働く、卵白や牛乳βラクトグロブリンにアレルギーの患者リンパ球を当の抗原で刺激を続けることにより樹立したT細胞培養株は抗原刺激によりIL-4をよく産生した。これはKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)で感作した健康人T細胞株をKLHで刺激した場合圧倒的にIL-2が産生されるのと対照的であった。アレルギー患者ではアレルゲンに反応するT細胞はIL-4をより産生しやすく、IgEの産生を誘導しやすいと考えられた。また、CD40のリガンドに異常のある症例ではIgEが産生されず、IgEへのクラススイッチにCD40が重要な働きを持つことが示唆された。
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