研究概要 |
X染色体性重症複合免疫不全症はIL-2Rγ鎖の欠損によることが明らかにされた。本症ではB細胞は正常に存在するが、IL-2レセプター(IL-2R)γ鎖はIL-4R,IL-7Rとも関連していると考えられ、IL-2はT細胞の増殖、IL-4はB細胞の増殖と分化、IL-7は未熟リンパ球の増殖を支持しているので、そのB細胞が正常な分化過程をたどっているか問題がある。本症の免疫グロブリンH鎖可変領域CDR3部の遺伝子について検討したところ、そのレパートリーについてはほとんど健康者のものと異ならないことが観察されたが、J領域ではJH3がよく用いられ、JH5は用いられ方が少ない偏りがみられた。一方、抗体の親和性の増大に関与していると考えられる遺伝子の突然変異については、いずれのクローンについてもJH遺伝子は胚細胞型JH遺伝子とまったく同一であり、突然変異が生じていないことが明らかにされた。すなわちIL-2Rγ鎖の欠陥は免疫グロブリン可変部遺伝子の突然変異が生じないことに結びついていると考えられた。 成熟したT細胞はCD4,CD8いずれかの分子を表出している。CD8はα,β2本のペプチド鎖からできているが、α鎖2本のホモダイマーのものと、α鎖・β鎖のヘテロダイマーのものとがあると考えられている。健康人のT細胞について調べてみるとα鎖もβ鎖も同程度に表出していて、ヘテロダイマーがほとんどであるようなT細胞が主体であるが、T細胞に異常があると考えられているWiskott-Aldrich症候群などの一部の原発性免疫不全症患者で、α鎖に比しβ鎖が少なく、α鎖ホモダイマーの表出が多いと考えられるT細胞が増加していた。胸腺外で分化したT細胞が多いことが示唆された。 高IgM症候群でのCD40リガンドの遺伝子異常が本邦例でも存在することを確認したこのことがIgG・IgAの産生不全の成因と考えられた。
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