研究概要 |
各種サイトカインを用いたマウスおよびヒト肥満細胞の大量培養法について検討し以下の結果を得た。 (1)、マウス骨髄より分離したlin,Sca-1^+細胞をSCF+IL-6あるいはSCF+IL-11存在下で液体培養すると、多能性造血前駆細胞が著明に増幅され、肥満細胞の出現は比較的少なかった。一方、SCF+IL-3orIL-3存在下では培養細胞のほとんどが培養肥満細胞(BMMC)となり、多能性造血前駆細胞を長期的に維持することはできなかった。(2)、マウス骨髄細胞をIL-3存在下で培養すると肥満細胞コロニーを誘導することができ、SCF,IL-4,IL-10はこれに相乗的に作用することが明らかとなった。(3)、マウス腹腔より分離した成熟肥満細胞はSCF,IL-3それぞれ単独では増殖できないが両者の存在下でほぼ100%の細胞が増殖し、IL-4あるいはGM-CSFはSCFと相乗的に作用した。(4)、ヒト多能性造血前駆細胞の増殖もSCF,SCF+IL-11により支持された。しかし、ヒト多能性造血前駆細胞から肥満細胞への増殖、分化は完全にSCF依存性であり、マウスと異なりIL-3はその過程を支持することはできなかった。(5)、臍帯血、骨髄より分離したCD34^+細胞をSCF存在下で液体培養すると、培養2週間目より肥満細胞が出現し、培養を継続するとほぼ純粋な肥満細胞を得ることができた。この培養肥満細胞は120日以上培養可能であった。(6)、CD34^+細胞からのSCF依存性の肥満細胞の産生は、初期を除きIL-3,GM-CSFにより著明に抑制され、IL-6,IL-11により若干促進された。IL-6添加により肥満細胞の成熟が促進される傾向が見られ注目された。肥満細胞の増殖、分化は複雑なサイトカインネットワークの中で調節されていることが明らかとなったが、ヒトとマウスではその調節機構が異なると考えられた。
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