研究概要 |
研究を疫学,臨床分析,実験細胞生物学の方法で行なった。 1.疫学研究 頻度では人口10万に3.2であった。外国の結果(3〜4.4)に一致した。突然変異率は1.6x10^<-5>と高かったが、これには出生順位や両親年齢などで相関するものはなかった。老化が早いとする証拠も得られなかった。 2.臨床研究 孤発例の症候は重症であり、知能障害で目立った。頭部CTの石灰化と知能障害やてんかんは相関がなく、知能障害は突然変異と深く結びついていた。家族例での世代間の症候は一般に親より子で重症化した。TSはしばしば低出生体重児であり、妊娠経過にも問題が目立ち、TSがすでに胎児期から発症していることを示していた。皮膚の白班や毛髪の脱色素が顔面の血管線維腫より早く見られること、真皮層が損傷を受けると血管線維腫は再びそこに生じてこないことなどは、遺伝子の発現が組織依存性、年齢依存性であることを示していた。 3.病態研究 病巣から得た培養線維芽細胞の増殖率は対照と差がなかった。血清要求性、細胞骨格蛋白分布、コンカナバリンA感受性などには対照と差がなかった。培養細胞の薬剤感受性をγ線型のDNA阻害剤、紫外線様損傷剤、DNA鎖間損傷剤によって検索したが差はなかった。培養リンパ球での染色体異常の出現率、X線やMNNGによる染色体の易感受性も認めなかった。すなはち、TSに易発癌性の特徴がある証拠はなかった。6例のTSの皮膚病変からから得た培養皮膚線維芽細胞にはしばしば大型で突起をもち形態が異なる細胞があった。これらには中間フィラメントの構成蛋白であるビメンチンとGFAPの存在が認められた。外・中胚葉由来のTS細胞には何かの因子によって細胞の質の変化する傾向がある。
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