研究概要 |
1.胎令12から14週の胎児26例の剖検肺を用いてCu,Zn-superoxide dismutase(SOD)及びglutathione peroxidase(GSH-Px)活性を測定した。胎生期を通じてそれらの蛋白あたりの活性値は、ほぼ一定の値(SOD,19.81±1.74units/mgprotein,GSH-Px,4.13±1.04units/mg protein)を示した。後者は湿重量当りでは胎生25週頃より上昇する傾向がみられた。 2.ビリルビンの酸化物質であるbiliverdinの光療法中の生成を中心に検討し,光療法前より血清中にbiliverdinは存在し光照射後著明に増加することを証明した。また,照射高源の差異での検討では,green lightとblue-white light での生成量の差異は認められなかった。しかし,血清中のbiliverdin濃度は、肝から胆汁中への排泄(細胆管)レベルでの競合物質や発達的変化が大きく影響すると考えられた。 3.微弱発光検出器(浜松フォトニクス社製アルガス)を用いて,発光プローブとしてO_2^-,^1O_2と特異的に反応するウミホタルルシフェリン誘導体(MCLA)で新生仔豚に持続的に注入し,無呼吸負荷前後の肺よりの発光を測定した。先ず100%酸素吸入のみを行なった場合,発光量の著しい増加が認められた。これに対し4分間の無呼吸後の100%酸素での蘇生で発光量は一段と著明に増加した。要するに活性酸素が肺で多量に発生していることをin vivoで証明出来た。一方,21%酸素での蘇生ではその量は低値であった。これに対し疏水性のantioxidantの一つであるbilirubinの水溶液(Na塩)を持続注入して黄疸を惹起せしめ,活性酸素の発生量に及ぼす影響を検討した。しかし発生量の減少は認められなかった。一方親水性のantioxidantである尿酸は発生量の減少効果を認めた。 新生児の赤血球寿命が,成人赤血球より短縮している原因を究明するため,分娩時得られた臍肺静脈血と母体血についてphenylhydrazineによる酸化ストレスをかけMCLAを用い微弱発光検出器で検出した。その結果,phenylhydrazineの同じ負荷量に対して臍帯血の赤血球は,それぞれ10検体の検討において,母体赤血球に比較し平均2.0倍の発光量を示し,しかもその減少パターンも異なっていることが明かになった。
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