研究概要 |
(1)当初の計画のとおりに、新たな患児よりヒト神経芽腫細胞株の樹立に成功している。 (2)大量培養については、ホロ-ファイバ-(HollowーFiber:HF)培養方法(HF法)を用いている。細胞は当科で樹立したヒト神経芽腫細胞株KPーNーRTBMIを、HFはグレ-スジャパン社アミコン,ミニヴィタファイバ-を用いた(中空糸500本,内径/外径200/350μm,膜面積約300cm^2,ECS約70ml,分画分子量30000)。HF内に1×10^8個の細胞を注入し、細胞が中空糸へ着床した後より中空糸内空間(intracapillary space:ICS)を25ml/minの流速で,24時間後より中空糸外空間(extracapillary space:ECS)を8ml/hrの流速で、培養液を潅流し長期間培養した。HFの中空糸膜は限外濾過膜となっているため、増殖に高分子蛋白が不可欠な細胞株はHF法には適さない。本系ではそれを克服するために、ECSの潅流を試み成功した。またECSの潅流により迅速な薬剤負荷が可能であると考えられた。 (3)Phosphorusー31 nuclear magnetic resonance spectroscopy( ^<31>PーMRS)の測定は潅流条件下で培養環境の恒常性を維持しつつ、積算回数2000で行なった(測定条件:繰返し時間2.0sec,60°パルス幅,81.134MHz)。MRS装置はGE社CSIーIIで、20mm径のコイルを装着した自家製プロ-プを用いた。培養14日目で明瞭なスペクトルが得られ、ヒト培養神経芽腫細胞の ^<31>PーMRS測定に成功した。一般にHF法の欠点として、ICS容積が大きいこと,潅流圧が高いことなどがある。今回良好なスペクトルが得られたことより、HF法によりMRS分析に必要な高密度細胞培養が可能であることが示された。 (4)chemical siftよりピ-クはPME,Pi,PDE,PCr,γーATP,αーATP,βーATPであった。腫瘍組織におけるin vivo ^<31>PーMRSと同様に、PMEは高くPCrは低い傾向が示された。
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