研究概要 |
生きた神経芽腫細胞の^<31>P-MRS(magnetic resonance spectroscopy)スペクトル測定のために、中空糸培養用ホローファイバーを用いて、潅流培養系を確立した。得られたスペクトルでは、PMEピーク(phosphomonoester)は高くPCrピーク(phosphocreatine)は認められず、腫瘍組織のin vivoのスペトクルと同様の傾向であった。外因性のグルコサミンとウリジンが代謝に及ぼす影響を、検討したところDPDE(diphosphodiester)ピークの増加を認めた。本系は培養神経芽腫細胞のリン含有代謝物質の変化を検討するうえで有用であることが示された。またDPDEは最近、分化との関連性が報告されている。本結果は神経芽腫におけるDPDEはUDP-N-アセチルグルコサミンによりなることを示唆する。つぎにクレアチンの類似体であるサイクロクレアチン(Cyclocreatine:CCr)の作用について検討した。CCrにより細胞の増殖は抑制される。負荷によりサイクロクレアチンリン酸(phosphoryl-cyclocreatine:CCr-P)ピークの出現,増加を認めた。CCrが細胞内でリン酸化されて、CCr-Pが合成され蓄積することが示唆された。またPMEピークは減少の傾向であった。 腫瘍の高いPMEは増殖性と関連する。低いPCrはエネルギーバッファーが少ないことを示す。腫瘍では異常な増殖と関連して、high energy demandの状態にあることが示唆されている。本系は神経芽腫の増殖と代謝についての検討に有用であると考えられる。本研究はエネルギー代謝の立場から神経芽腫の生物学的特性についての示唆を与えるものと考える。また腫瘍に対する^<31>P-MRS法の臨床応用として、PMEピークが腫瘍増殖のマーカーとなる可能性が示唆された。
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