研究課題/領域番号 |
03454269
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
桃井 真里子 自治医科大学, 医学部, 助教授 (90166348)
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研究分担者 |
小黒 範子 自治医科大学, 医学部, 助手 (10214107)
市橋 光 自治医科大学, 医学部, 助手 (70213006)
香川 靖雄 自治医科大学, 医学部, 教授 (30048962)
下泉 秀夫 自治医科大学, 医学部, 助手 (30196547)
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キーワード | ミトコンドリア異常症 / ミトコンドリアDNA / MELAS |
研究概要 |
ミトコンドリア異常症における病態の特性は、変異遺伝子が増幅することにより患者を形成することである。従って、患者形成機構の解析には変異ミトコンドリア遺伝子(mtDNA)の患者、患者細胞における動態の解析が重要である。 本研究では、(1)患者における変異mtDNAの組織内分配状況を解析し、患者形成機構を推測した。さらに、(2)細胞内病態の修飾機構の可能性を検討した。 (1)ミトコンドリア異常症の1病型であるMELASの患者4名より、多数の筋細胞をクローン化し、各々のクローンのmtDNAを3243変異に関して定量解析した。 32P標識プライマーを用いて、3243領域を含むフラグメントをPCR増幅し、Apal処理後、ポリアクリルアミドゲル上でFujix BAS2000で定量した。10歳代の患者3名においては、変異mtDNA/正常mtDNA+変異mtDNAが0-20%近傍の細胞群と80%近傍の細胞群に分かれ、50%近傍の細胞は稀であった。 20歳で末期の患者より得た筋細胞では、80%近傍の細胞群はピークを形成せず、むしろ、中間の割合を示す細胞があった。 以上は、患者においては、少なくとも筋組織においては、変異mtDNAは各細胞内ではstochastic segregationに近い状態を経て分配されていること、さらに、完全なsegregationには至っていないこと、を意味している。 従って、ほとんどの細胞内では割合の差はあるが、正常mtDNAと変異mtDNAが共存する状態にあり、正常mtDNAの発現量が細胞固有の閾値以上を満たしていれば、変異mtDNA存在下でも正常状態であることを推定させた。筋組織で変異mtDNAが60%であっても、筋症状を発現しないことは、各細胞内でヘテロプラスミー状態であることから理解された。 (2)細胞内ヘテロプラスミーであることが(1)により解析された。ミトコンドリア遺伝子の転写活性を制御する機構の一つであるTF1の変動を解析した。TF1は、核遺伝子支配のDNA結合蛋白であり、mtDNAに結合することによりmtDNAの転写が開始される。核遺伝子発現を制御することでTF1発現が修飾され、mtDNA転写活性が修飾される可能性を、上記の筋細胞において検討した。 RA、D3、のうちRA 10^<-9>以上で、TF1 mRNAが増加する事をRT-PCRで検出した。 この条件下でのmtDNA転写量の検討は進行中である。 以上、MELASにおける変異mtDNAが細胞内ヘテロプラスミーであり、病態の修飾には正常遺伝子の発現が重要な視点であることが判明した。
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