研究概要 |
毛成長の維持には、個々の細胞が正常に分裂・分化することはもとより、毛包構成細胞間の協調的な相互作用が必要である。しかし、毛包構成細胞(毛母細胞・外毛根鞘細胞・毛乳頭細胞)各々の細胞生物学的特性の解明は未だ充分でなく、ましてこれら細胞間の相互作用に関しては全く不明である。そこで我々は、毛成長の制御機構を明らかにする事を目的として、毛包組織の器官培養法と毛母細胞の細胞培養法の手技を用いて、以下の検討を行なった。 1.マウス毛包組織の無血清器官培養法を用いて、各種サイトカインの毛成長に及ぼす影響を検討した。 (1)a-FGF,b-FGF,TGF-α,IL-6は、毛成長にほとんど影響を与えなかった。 (2)k-FGF,EGF,TGF-β,IGF-1,IL-α,TNF-αは、毛成長(毛伸長・DNA合成)を抑制した。 (3)HGF(hepatocyte growth factor)は、毛成長(毛伸長・DNA合成)を有意に促進した。 以上より、HGFは毛成長促進因子として作用することが示唆された。 2.毛母細胞の培養系の確立および細胞特性の解明を検討した。 (1)酵素処理を用いずに、毛球部より毛母細胞を単離した。(2)10%FCS添加DMEMにて1日培養後、KGMにて継代培養可能となった。(3)抗ケラチン単クローン抗体(HKN-7)を用い、毛ケラチンの発現を蛍光抗体法にて観察したところ、大多数の細胞がHKN-7陽性を示した。 現在、この毛母細胞を用い、各種サイトカインの影響を検討中である。
|