研究概要 |
アルミニウム中毒ウサギをアルツハイマ-病脳内病変のモデルとして研究し,アルミニウムの作用により脳内にニュ-ロフィラメントが集積する事を示し,その形成機序についての検討を進めた.その過程でリソゾ-ム内プロテア-ゼ活性の変化を明らかにし,細胞骨格蛋白の異常はプロテア-ゼの変化によることを明らかにした.また,リソゾ-ム酵素の中でもカテプシン類についてその分子の異常を指摘した.アルツハイマ-病は全身性の疾患であるとの考えに基づき,アルツハイマ-病患者から採取した皮膚線維芽細胞について研究し,アルツハイマ-病線維芽細胞では接着効率が低下しており,その細胞骨格蛋白に異常が認められることを報告した.6家系のアルツハイマ-病でアミロイドβ蛋白前駆体(ABPP)の17エクソンについてミュ-テ-ションの有無を検索したところ,ABPP 770のVal 717→Ileのアミノ酸置換をもたらすC→Tトランジションを有する1家系を経験した.この家系内に発症した患者の死後脳の神経病理学的所見は,海馬・側頭葉・前頭葉に多数の神経原線維変化および老人斑を認め,アルツハイマ-病の診断が確定された.また本例は,抗β蛋白抗体による免疫染色で成熟老人斑の他に多数のdiffeseプラ-クが,ABPP抗体による免疫染色で神経細胞体およびdystrophic neuritesが染色された.この家系の家族構成員より採取した血液からバッフィ-コ-トを調整し,そのバッフィ-コ-トをハムスタ-脳内に接種したところ,ハムスタ-の脳幹神経核の神経細胞体内に抗ニュ-ロフィラメント抗体陽性の線維性構造物が認められた.これらの線維性構造物は,前庭神経核以下の神経核に両側性に認められ,抗ユビキチン抗体陽性,抗タウ抗体陽性であったが,抗PHF抗体陰性であった.
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