研究概要 |
活性酸素を中心にしたラジカル種が中枢神経系の障害発現に関与していると考えられる現象が多い。このような状況を鑑みて,これらの化学種をニュ-ロトキシンとして捉えた時のフリ-ラジカルの挙動を解明することを目的として本研究を推進した。 1)インビボESRによるニトロキシドラジカルの代謝の研究 ラットに投与したニトロキシドラジカルをESR法により体外計測し,その消長を観測することが可能である。本年度はラットを対象に,対照群,抗酸化剤と考えられている,ビタミンE,イデベノン投与群における,ニトロキシドラジカルの代謝をインビボESRにより検討した。対照群と抗酸化剤投与群のラットの間に代謝速度に差があることが見いだされた。体外から投与されたニトロキシドラジカルは,生体内でヒドロキシルアミンに還元されることが知られている。従って,ニトロキシドラジカルの代謝過程の解析を進めることにより,ラジカルに対する酸化還元系を中心にした生体反応機構を解明できるものと考える。一方,このような研究においてニトロキシドラジカルの単回投与ではなく,反復投与により一層有効な情報が得られることを見いだした。 2)活性酸素感応電極の試作 ス-パ-オキシドディスムタ-ゼをフィブロインを用いて固定化し,この固定化酵素による酵素電極を作製した。この電極を過酸化水素電極として作用させ,ス-パ-オキシド発生のモデル系で定電位電解による電解電流を測定した結果,この測定値はモデル系で発生するス-パ-オキシドの量と密接に相関し,ス-パ-オキシド感応電極として使用可能であることが分かった。 以上の成果は,生体系のフリ-ラジカルに関する新知見であると共に,本研究におけるフリ-ラジカルの量と分布また代謝に関する研究の方法論の基礎を確立させるものである。次年度以降,中枢神経系に具体的に応用すれば,一層の展開がみこまれる。
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