研究課題
レーザーの医療の応用範囲はますます広くなっているが、近年その有用性が大きく注目されつつあるのが、疼痛治療への応用や創傷治癒促進など光刺戟の分野への応用である。無侵襲で安全なレーザー利用は近い将来、代表的な治療方法として各種の分野への応用が期待される。本研究は、光と生体反応の基礎研究を行うもので、本年度は、従来より継続している創傷モデルを用い、生体刺戟が光の光学的成分としてどの部分によるのかをさらに検討した。つまり、波長依存性、偏光特性、出力について検討した。その結果(1)波長依存性に関しては、創傷モデルの検討では、大きな差異は認められなかった。しかし、細胞レベル、細胞以下のレベルでは検討の価値が十分あるように思える。(2)偏光特性では、直線偏光が大事な要素で、レーザー光といえども、偏光をなくす照射をするとその効果が失せることが判明した。また、レーザー光でない光を直線偏光にすることで、無偏光時効果がなくとも、効果が出ることを解明した。また、右円偏光と左円偏光とを比較すると、左円偏光は効果がなく、右では効果があることも解明した。(3)出力に関しては、約800nmの波長のもので、同じエネルギー密度でも単位時間当たりの出力が低くて、時間を多くしてエネルギー密度を高める方法が良いという印象を得ている(1ジュール/cm^2、10ジュール/cm^2、100ジュール/cm^2というスケールで検討した結果)が、まで創傷の大きさとの関係等では検討の余地が残っており、今後、創傷の大きさに伴う、至適光の照射方法が十分に検討される必要がある。なお、昨年度も報告したが、治療遅延の見られる糖尿病モデルマウス等での実験では、糖尿病モデルでは効果的であるが、免疫不全モデルでは今回はまだ効果的な結果を得ていない。今後、光照射の対照となるモデルとの関連での研究がさらに必要と思う。
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